約束のない日記・・・ツイゴイネルワイゼン・・・①

・・・昔、ある店(ナイト・レストラン・バー?みたいなこ洒落たバー?)で3ヶ月契約で演奏してた頃、、、ちなみに普通は長くて1ヶ月なんだが、それなりにファン層を持っていたので滅多にない3ヶ月契約となった。しかしこれはメリットとデメリットが双方にあって、店にしてみると演奏バンドがマンネリ感を見せると客が引くので、売り上げに響く。(当時はどこの店にも生バンドが演奏していた)演奏側にしてみると3ヶ月の保障はあるものの、飽きられたとわかると二度とリピートしてもらえない。音で生きるのもなかなかにシビアな世界だった。スタンダードナンバーを増やし、なによりいい演奏を心がけた、、、っがそれでも時々襲ってくる空虚感は偏頭痛と抱き合わせで、精神的に参ってもいた。
ある日、休憩時間に楽屋にいるのが嫌で、フっと店の近くにある喫茶店に初めて入った。
一番奥まったところに座ってコーヒーを注文した。他に客はおらず、丁度いい高さにスピーカーが設置してあり、「どこのメーカーだろう?」っとおもってる時に、いきなり音楽が流れてきた。
その印象的な出だしと、まるで泣いて歌っているようなバイオリンの音色とせつないメロデイーに魅せられた。やがてウエイトレスがコーヒーを運んで来た時は、正面を向いたまま大粒の涙を流していた。ウエイトレスは「何この人?」って雰囲気満載でコーヒーを置いて足早に消えた。それが生まれて初めて聴いたツイゴイネルワイゼンだった。

ツィゴイネルワイゼン(ヤッシャ・ハイフェッツ)